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    鼠径ヘルニア(脱腸)手術の入院期間は何日?日帰りと入院の違い、手術方法の選び方を専門医が解説

    田村 卓也 田村 卓也
    鼠径ヘルニア(脱腸)手術の入院期間は何日?日帰りと入院の違い

    手術で何日入院するのか。仕事や家のことを、何日くらい休めばいいのか。鼠径ヘルニア(脱腸)の手術を勧められた方から、最初に聞かれることの多い質問です。

    入院の日数は、手術の方法と、手術を受ける施設で変わります。従来は3泊4日ほどの入院が必要でしたが、いまは同じ日のうちに帰宅する日帰り手術もあります。当院は日帰り手術を専門にしていて、朝に来院し、昼過ぎには帰宅する流れです。

    日帰りにするかどうかを決めるのは、体の状態と持病、それに帰宅後にそばで見守る人がいるかどうかです。

    • 鼠径ヘルニア手術の入院期間と、日帰り手術の当日の流れ
    • 手術時間の目安
    • 手術方法の種類(切開法と腹腔鏡)と選び方
    • 日帰りと入院の違い(費用と、帰宅後の過ごし方)
    • 入院を勧める場合と、手術のあといつから動けるか
    執筆者
    田村 卓也

    日本外科学会 外科専門医

    田村 卓也

    鼠径ヘルニア脱腸日帰り手術大阪アルプスクリニック院長 | 川崎医科大学医学部卒業後、大阪赤十字病院などで臨床経験を積み、京都大学大学院医学研究科に進学。 鼠径ヘルニア(脱腸)を中心とした腹腔鏡による日帰り手術に注力し、患者さまの身体的・心理的負担を軽減すべく2022年に当院を開院。

    監修者
    所 為然

    一般社団法人日帰り手術推進機構 代表理事

    所 為然

    一般社団法人日帰り手術推進機構 代表理事 | 広島大学医学部医学科卒業後、大阪赤十字病院などで臨床経験を積む。身体負担の少ない腹腔鏡下で行う鼠径ヘルニア根治術で、患者さまの早期の社会復帰を実現。鼠径ヘルニア日帰り手術広島アルプスクリニック院長。

    1. 入院期間は、手術の方法と施設で変わる

    1-1. 従来は、3泊4日ほどの入院が必要だった

    足の付け根のしこりが脱腸だと分かると、次は手術の話になります。鼠径ヘルニアの手術には、従来、3泊4日ほどの入院が必要でした。いまも入院で手術を行う病院はあり、何日になるかは、病院の方針と手術の方法しだいです。

    入院の目安
    入院して行う手術従来は3泊4日ほど
    日帰り手術手術の日のうちに帰宅
    方法による違い腹腔鏡のほうが、入院も仕事に戻るまでも短い(CQ7-1)

    1-2. 日帰り手術は、同じ日のうちに帰宅する

    入院から手術、退院までを1日で終えるのが日帰り手術です。鼠径ヘルニアの手術の多くが、日帰りで安全に行われています(CQ11-1)。

    当院の一日は、たとえばこうです。朝8時45分に来院して、9時に手術室へ。10時45分に手術室を出たら、個室の回復室で1時間から1時間半ほど休みます。歩いてみて、水も飲めたら帰宅。来院から帰宅まで、3時間半ほどです。

    日帰り手術の当日の流れ(当院の一例)
    鼠径ヘルニアの日帰り手術、初診から治療が終わるまでの流れ(11分39秒)

    前の日から、食事と水分をとってよい時間が決まっています。手術前の準備と当日の流れは、手術の説明のときにお伝えします。

    1-3. 手術そのものは、片側で1時間前後

    片側の脱腸なら、手術の時間は1時間前後。麻酔をかけて目が覚めるまでを含めると、手術室にいるのは2時間弱です。

    次のような場合は、もう少し長くかかります。

    手術が長くなりやすい場合

    • □ 左右の両側を、一度に治す
    • □ 再発した脱腸
    • □ 大きく飛び出している脱腸

    2. 手術方法の種類と、選び方

    方法を決める前に、診察では、鼠径部の膨らみが本当に脱腸なのかを超音波で確かめます。どの方法でも、手術ですることは同じ。お腹の壁の弱くなったところ(ヘルニア門)を塞いで、脱腸が出てこないようにします。

    鼠径ヘルニアの解剖図

    塞ぎ方は、メッシュを使わずに自分の組織を縫い合わせる方法と、医療用のメッシュで補強する方法に分かれます。メッシュを使う方法には、足の付け根を切る切開法と、お腹の内側から行う腹腔鏡手術の2つがあります。

    2-1. 切開法:足の付け根を数cm切る

    足の付け根の皮膚を数cm切り、弱くなったところを直接見ながら、外側からメッシュを当てます。Lichtenstein法やKugel法など、いくつかのやり方があり、局所麻酔でも行えるのが特徴です(CQ15-1)。

    鼠径部切開法の解説図

    全身麻酔ができない方や、以前のお腹の手術で癒着が強い方には、こちらが勧められます(CQ7-1)。

    2-2. 腹腔鏡手術:お腹に小さな穴を3か所

    腹腔鏡手術では、お腹に3〜5mmほどの穴を3か所開け、カメラでお腹の内側を見ながら、腹膜の裏側にメッシュを敷きます。全身麻酔で行う方法です。腹膜を切って進むTAPP法と、腹膜の外側だけを進むTEP法があり、当院はTAPP法で手術しています。

    腹腔鏡手術の解説図

    お腹の内側から見るので、反対側に脱腸が隠れていないか、大腿ヘルニアが無いかも、その場で確かめられます。

    2-3. どちらを選ぶか

    違いは、入院期間のほかにもあります。ガイドラインがまとめた比べ方(CQ7-1)を、項目ごとに並べるとこうなります。

    腹腔鏡手術切開法
    入院・仕事に戻るまで短い─
    傷の感染・手術のあとの痛み少ない─
    手術時間─短い
    血管の傷・精巣の痛み─少ない
    再発差が無い差が無い

    良し悪しが両方にあるので、腹腔鏡に十分慣れた外科医が行うなら腹腔鏡、全身麻酔ができない方や癒着の強い方には切開法。これが選び方の基本になっています(CQ7-1)。

    田村卓也 院長

    専門医のワンポイント

    外来でご相談を受けるなかで、「両側にあると言われたけれど、手術は2回になりますか」と聞かれることがあります。腹腔鏡なら、同じ3か所の穴から左右を一度に治せます(CQ7-3)。お腹の中から見ると、ご自分では気づいていなかった反対側が見つかることもあります。

    関連記事:外鼠径ヘルニアとは?初期症状と、左右どちらに出やすいかを専門医が解説/内鼠径ヘルニアとは?外鼠径ヘルニアとの違いと、なりやすい人を専門医が解説

    3. 日帰りと入院で、何が違うか

    自宅か、病院か。手術の夜をどこで過ごすかがいちばんの違いで、そのまわりにかかる費用も変わってきます。

    3-1. なぜ入院せずに済むのか

    その日のうちに帰るには、手術のあとの痛みと吐き気が軽く、自分で尿が出せることが条件になります。

    全身麻酔で使う薬の種類は、入院して受ける場合と変わりません。違うのは量で、当院では傷のまわりの局所麻酔と、効き方の違う痛み止めを組み合わせて、医療用麻薬を必要な分だけにとどめています。

    医療用麻薬は、吐き気や、尿が出にくくなる原因になります。その量を抑えると、手術のあとの吐き気が少なくなり、自分で尿を出しやすくなる。当院が尿道カテーテルを原則として入れずに済ませているのも、手術時間を安定させていることと、この麻酔の組み立てがあってのことです。

    全身麻酔でも尿道に管を入れない理由(5分20秒)

    3-2. 費用の違い

    費用のうち、手術そのものの分は、日帰りでも入院でも同じです。差が出るのは、入院したときだけにかかる費用。入院中の食事代と差額ベッド代は、どちらも高額療養費の対象にならず、全額が自己負担になります。もう一つ、入院が月末から翌月にまたがると、高額療養費の上限額が2か月分かかることがあります。高額療養費は、1日から末日までの暦月で区切って計算するためです。

    日帰りと入院で、何が違うか

    窓口でのお支払いは、年齢と所得の区分で決まる高額療養費の上限額までで済む方が、当院ではほとんどです。

    3-3. 日帰りで気をつけること

    その夜は、ご自宅で過ごしていただくことになります。当日までに、次の3つを用意しておいてください。

    手術の日までに用意しておくこと

    • □ 帰りの付き添い、または電車やバスでの帰り道(当日は車を運転できません)
    • □ 処方された痛み止めを、その夜すぐ飲めるように
    • □ 困ったときの連絡先(当院の LINE・電話)
    田村卓也 院長

    専門医のワンポイント

    外来でご相談を受けるなかで、「家に帰ってから痛くなったらどうしよう」と心配される方がいらっしゃいます。痛みの山が来るのは、その日の夜から翌日にかけて。痛くなるのを待たずに、処方した痛み止めを早めに使っていただくと、その夜を楽に過ごせることが多いです。

    関連記事:鼠径ヘルニア(脱腸)手術後の膨らみは漿液腫?再発との見分け方と、合併症・後遺症を専門医が解説

    4. 入院を勧めるのは、どんな場合か

    持病が重い方の場合、日帰りで行うのがよいかどうかは、まだはっきりしていません(CQ11-1)。こうした方では、麻酔と手術の方法に加えて、帰宅したあとの見守りと、何かあったときの連絡の手段まで確かめてから決めることになっています。

    日帰りか、入院かを決めるもの

    再発した脱腸でも、日帰りで手術できることはあります。

    前回の手術の情報が無い、二度目の再発である、はまり込んで戻らない嵌頓(かんとん)の疑いがある。こうした場合は、入院での手術が向いています。

    田村卓也 院長

    専門医のワンポイント

    外来でご相談を受けるなかで、「入院できる病院のほうが安心ではないか」と聞かれることがあります。入院か日帰りかを分けているのは、手術のあとの一晩を、どこでなら安全に過ごせるか。持病が重い方や、帰ってから見守る人がいない方に入院できる病院をお勧めするのは、そのためです。

    当院で安全に日帰りにできないと判断したときは、入院設備のある病院をご紹介します。入院できるかどうかは、総合病院とクリニックの向き不向きのなかでも、いちばん大きな違いです。

    年齢の目安もあります。80〜85歳の方は、初診のときと手術の日の2回、ご家族か同居されている方の同伴をお願いしています。86歳以上の方は、診察と診断までを当院で行い、手術は受けていません。高齢の方の鼠径ヘルニア手術では、手術しないで様子を見る選択も含めて考えます。

    5. 手術のあと、いつから動けるか

    歩くのは、手術のあとその日のうちから。帰宅してからの暮らしに、細かな制限はありません。控えてほしいのは、重い物の持ち上げと、強くいきむこと、腹筋運動くらいです。

    手術のあと、いつから何ができるか

    シャワーは手術の日から、湯船とお酒は3日目から。デスクワークと車の運転は、翌日から再開できます。立ち仕事や力仕事は、仕事の内容によって戻る時期が変わるので、診察のときにご相談ください。

    軽い運動は1週間から、腹筋運動やゴルフは2週間からと、手術後の回復に合わせて少しずつ戻していきます。

    診療時間 月・水〜土は21時まで、火曜と日・祝は17時まで診療しています(17時以降と火曜・日祝は要予約)。電話・Web予約・LINEでのご予約・ご相談は、24時間365日受け付けています。

    よくある質問

    鼠径ヘルニアの手術の入院日数は、平均で何日くらいですか。

    入院で行う場合、従来は3泊4日ほどでした。いまは手術の方法と施設で変わり、日帰り手術なら、その日のうちに帰宅します。当院は日帰りで、来院から帰宅まで3時間半ほどが一例です。

    手術時間はどれくらいですか。

    片側の脱腸で1時間前後です。両側を一度に治す場合や、再発した脱腸、大きく飛び出している脱腸では長くなることがあります。麻酔の時間を含めると、手術室にいるのは2時間弱です。

    日帰り手術のデメリットはありますか。

    手術の夜を、病院ではなく自宅で過ごすことになります。そのため、持病が重い方や、帰宅したあとに見守る人がいない方には向かないことがあり、その場合は入院できる病院をご紹介します。手術の当日は、車の運転もできません。

    腹腔鏡手術と切開法で、入院期間は違いますか。

    腹腔鏡手術のほうが、入院期間も、仕事や日常生活に戻るまでの期間も短いとされています(CQ7-1)。当院は腹腔鏡手術(TAPP法)を日帰りで行っています。

    手術のあと、いつから仕事に戻れますか。

    デスクワークなら翌日から戻れます。立ち仕事や力仕事は、重い物を持ち上げる作業が入るほど時期が後ろになるため、診察のときに仕事の内容をお聞かせください。

    まとめ

    鼠径ヘルニア手術の入院期間は、手術の方法と施設、そして体の状態で変わります。日帰りにするか入院にするかは、持病と帰宅したあとの環境を確かめて決めます。

    おさらい

    • 従来は3泊4日ほどの入院。日帰り手術なら、その日のうちに帰宅
    • 当院の日帰り手術は、来院から帰宅まで3時間半ほど(一例)
    • 手術時間は片側で1時間前後。両側や再発などでは長くなる
    • 腹腔鏡は切開法より入院期間が短く、日常生活に早く戻れる
    • 持病が重い・見守る人がいないなどの場合は、入院できる病院をご紹介

    まだ手術を受けるかどうかを迷っている方は、脱腸の種類と、治療までの流れを先に知っておくと、方法や入院の話が分かりやすくなります。