鼠径ヘルニア(脱腸)日帰り手術の流れと手術時間|当日のスケジュールと術後の過ごし方を専門医が解説
手術の日は何時に行けばいいのか。前の晩は食べてもいいのか。帰ってから、いつお酒を飲めるのか。鼠径ヘルニア(脱腸)の日帰り手術を控えた方から、外来でよく受ける質問です。
当院の日帰り手術は、初診と手術の日の、最短2回の来院で終わります。手術の日は、朝に来院して昼過ぎに帰宅する流れが一例です。
この記事で分かること
- 初診から、手術の日が決まるまでの流れ
- 手術の前日と当日の朝に守ってほしいこと(食事・水分・たばこ)
- 手術当日のスケジュールと、手術時間
- 帰宅してからの食事・シャワー・痛み
- 仕事・お酒・運動・車の運転を再開できる時期
目次
1. 手術を控えた方から、よく聞かれること
大阪アルプスクリニック院長の田村卓也です。手術を決めた方から多いのは、「手術のあとの生活」「痛みの程度」「仕事に戻れる時期」の3つです。どれも、当日の流れと帰ってからの決まりを先に知っておくと、仕事の休みをいつ取るか、家のことを誰に頼むかといった段取りがつけやすくなります。
脱腸の起こりやすさや見つかり方は、男性と女性で少し違います。男性の方は、なぜ脱腸になるのかを男性の鼠径ヘルニアの原因で先に読んでおくと、診察での説明が頭に入りやすくなります。
女性の脱腸は症状が出にくく、ほかの病気と紛らわしいこともあるので、女性の脱腸の症状もあわせて読んでおいてください。
2. 手術の日までの流れと、術前の検査
2-1. 初診から、手術の日が決まるまで
初診では、鼠径部の膨らみが脱腸かどうかを診察と超音波で確かめ、手術の内容と麻酔について説明します。そのうえで術前の検査を受けていただき、ご希望をうかがって手術の日を決めます。ここまでが初診の日に行うことで、2回目の来院が手術の日になります。
検査の内容と、かかる時間の目安です。
| 検査項目 | 目的 | 所要時間 |
|---|---|---|
| 身体診察 | 鼠径部の膨らみや戻り具合を確認 | 約5分 |
| 超音波検査 | ヘルニアの種類と大きさを評価 | 約10分 |
| 血液検査 | 全身状態の確認 | 約5分 |
| 心電図検査 | 心臓機能の評価 | 約5分 |
| 呼吸機能検査 | 肺機能の確認 | 約10分 |

まだ受診先を決めていない方は、鼠径ヘルニアを何科で診てもらうかを先に確かめておくと迷いません。
費用の見通しも、手術を決める前に立てておきましょう。3割負担で窓口に払う金額と、ひと月の上限を超えた分が戻る高額療養費の考え方は、鼠径ヘルニアの手術費用で確かめられます。
2-2. 手術の前日と、当日の朝に守ってほしいこと
全身麻酔をかけるので、食事・水分・たばこに決まりがあります。
手術の前日と当日の朝
- □ 食事:手術の前日、夜9時からは何も食べない
- □ 水分:手術の3時間前までは飲んでもかまわない
- □ たばこ:手術の2週間前からやめる
たばこは、全身麻酔の合併症を増やします。本数を減らすだけでなく、2週間前からきっぱりやめておくことが、手術に向けたいちばん大事な準備のひとつです。
3. 手術当日の流れ|来院から帰宅まで
当日の流れは、たとえばこうです。8時45分に来院、9時に手術室へ入り、10時45分ごろに手術室を出て、12時15分ごろに帰宅。来院から帰宅まで、3時間半から4時間ほどを見ておいてください。お迎えの方がいる場合も、この時間を目安に予定を組んでもらえれば十分です。
3-1. 来院してから、手術室に入るまで
着替えの術衣は、当院でお貸しします。着替えがすんだら看護師が血圧や脈を測り、麻酔科の医師と外科の医師の診察を受けてから手術室に入ります。
お腹に小さな穴を開けて、カメラで中を見ながら進める腹腔鏡手術で、傷は3〜5mmほどが3か所です。
3-2. 手術時間は、片側で約1時間
かかる時間は片側で約1時間、両側で約1時間半。全身麻酔なので、手術中に痛みを感じることはありません。
尿の管(尿道カテーテル)は、全身麻酔でも原則として入れていません。医療用麻薬は尿を出しにくくするので、傷への局所麻酔と飲み薬の痛み止めを組み合わせて、その量を抑えているためです。帰宅の前には、自分で尿が出ることを確かめます。

3-3. 回復室で休んでから、帰宅まで
麻酔から覚めたら、個室の回復室で休んでいただきます。帰宅までの様子は、おおよそ次のようになります。
| 手術室を出てから | 状態 | すること |
|---|---|---|
| すぐ | 麻酔から覚めていくところ | 回復室でモニターを見ながら休む |
| 5〜10分後 | 意識が戻る | 血圧・脈の確認 |
| 1時間ほど | 回復室で休む | 水を飲み始める |
| 1時間半ほど | 歩ける・水が飲める・尿が出る | 確認できたら帰宅 |
帰りは、車を運転できません。ご家族に付き添ってもらうか、公共交通機関で帰れるよう、段取りをしておいてください。

専門医のワンポイント
外来でご相談を受けるなかで、「その日のうちに、本当に家に帰れるのか」と心配される方が多いです。帰っていただくのは、自分で歩けて、水が飲めて、尿が出ることを確かめてから。どれかがうまくいかないときは、急がせずに様子を見ます。
入院で受ける場合との違いや、入院のほうが向く方については、鼠径ヘルニアの手術の入院期間にまとめています。
4. 帰宅したあとの経過
4-1. 当日と翌日:食事・シャワー・痛み
帰宅したら、食事はふだんどおりでかまいませんし、シャワーも当日から浴びられます。湯船につかるのとお酒は術後3日目からで、それまでは控えてください。
いちばん痛むのは、手術をした日の夜から次の日にかけて。処方した痛み止めを、がまんせずに使ってください。
4-2. 仕事に戻る時期
デスクワークなら、痛み止めを飲みながら、翌日から戻れる方がほとんどです。
| 仕事の内容 | 戻れる時期の目安 | 気をつけること |
|---|---|---|
| デスクワーク | 手術の翌日から | 無理のない範囲で |
| 立ち仕事・体を使う仕事 | 仕事の内容で変わります | 診察のときにご相談ください |
同じ立ち仕事でも、重い荷物を運ぶのか、決まった場所で立っているのかで、傷にかかる負担は違ってきます。回復の目安は手術後の痛みと回復期間で、仕事ごとにもう少し詳しく書いています。

5. お酒・たばこ・運動・車の運転は、いつから再開できるか
再開の目安は次のとおりです。傷の治り方には個人差があるので、動いて痛みが出たら、そこで止めてください。
| 再開すること | 時期の目安 |
|---|---|
| お酒 | 術後3日目から |
| たばこ | 術後7日目までは控える |
| 車の運転 | 術後1日目から(痛み止めを飲んでいるあいだは注意) |
| 散歩・軽いジョギング | 術後1週間から |
| 筋力トレーニング | 術後10日目から、少しずつ |
| 腹筋運動・ゴルフなど強めの運動 | 術後2週間から |
脱腸を治してしまえば、嵌頓(かんとん)の心配はなくなります。傷の内側が落ち着くまでには日にちがかかるので、急に元の生活へ戻さず、再開の目安の時期に沿って、少しずつ広げていってください。お腹に力が入る筋力トレーニングや腹筋運動は、とくに時期を守ってください。

専門医のワンポイント
外来でご相談を受けるなかで、痛み止めを飲まずにがまんしてしまう方が多いです。痛みを抑えておくほうが歩いたり眠ったりしやすく、そのぶん体も動かしやすくなります。違和感が長く続くときは、LINEか電話で遠慮なくご相談ください。
よくある質問
Q. 手術は痛いですか?
全身麻酔なので、手術中の痛みはほとんどありません。手術のあとの痛みは、処方する痛み止めで抑えられます。
Q. 日帰りで、その日のうちに帰って大丈夫ですか?
歩けるか、水が飲めるか、尿が出るかを確かめて、帰れる状態になってから帰宅していただきます。万一のときは、提携している病院に入院することもできます。
高齢の方や持病のある方の手術では、日帰りにするかどうかを診察で決めます。
Q. 再発の可能性はありますか?
メッシュで補強する手術でも、再発をゼロにはできません。起こりやすい時期や前兆は、鼠径ヘルニアの再発にまとめています。
再発ではない、手術のあとの膨らみや痛みについては手術後の合併症へ。
まとめ
日帰りで受ける脱腸の手術は、前日の食事から帰ってからの過ごし方まで決まりを守れば、その日のうちに家へ帰れる治療です。来院は初診と手術の日の最短2回で、手術の日は朝に来て昼過ぎに帰る流れが一例です。
足の付け根の膨らみが気になっていて、まだ診断を受けていない方は、先に一度診察を受けてください。
自分で治せないかと迷っている段階でも、ご相談だけでかまいません。
診療時間 月・水〜土は21時まで、火曜と日・祝は17時まで診療しています(17時以降と火曜・日祝は要予約)。電話・Web予約・LINEでのご予約・ご相談は、24時間365日受け付けています。