大人のでべそ(臍ヘルニア)は手術で治す。女性・産後に多い理由と日帰り手術を専門医が解説
おへそが出ている。子どものころからなのか、それとも最近なのか。大人になってから膨らんできたでべそは、臍ヘルニア(さいヘルニア)という病気です。出臍と書くこともありますが、外来では「でべそ」とおっしゃる方がほとんどです。
赤ちゃんのでべそは、成長とともにおなかの筋肉が育って閉じることが多いものです。大人は違います。いったん広がった筋膜の穴は、体重が落ちても腹圧が下がっても、放っておいてふさがることはありません。治すとなれば手術になります。
飛び出す場所がおへそなら臍ヘルニア、足の付け根なら鼠径ヘルニア(脱腸)。どちらもおなかの壁の弱いところから中身が押し出されてくる状態で、同じヘルニアの仲間です。当院ではどちらも日帰りの手術で扱っていて、健康保険が使えます。
この記事で分かること
- 大人のでべそが自然には治らない理由
- でべそになりやすい人。女性と産後に多い理由
- 縫い閉じる方法とメッシュで塞ぐ方法の選び分け
- 日帰り手術の流れと、初診の日に手術できる条件
- 健康保険と高額療養費の使い方。臍形成だけが対象外になる理由
- 放置したときに起こる嵌頓と、その日のうちに受診するサイン
目次
1. 大人のでべそは自然には治らない
おへその下では何が起きているか
誰のおへそにも、筋膜の隙間があります。胎児のときに臍帯が通っていた名残で、ふつうは生まれたあとに閉じる構造。ここが閉じきらなかったり、おなかに力がかかり続けて広がったりすると、隙間から腸や脂肪が皮膚の下へ押し出されてきます。
力を入れると出てきて、押すと引っ込む。この飛び出したり戻ったりする動きが、でべそのいちばん分かりやすい特徴です。筋膜を越えて内臓が皮膚のすぐ下まで来ているので、外から見て分かるほど盛り上がります。

赤ちゃんのでべそと、大人のでべそは分けて考える
新生児のでべそは比較的よく見られます。成長にともなって自然に治ることが多いので、軽ければ経過観察。
大人になってから発症したものは、そうはいきません。長く生きてくるあいだにおへその筋膜がもろくなり、そこへ肥満や妊娠、大量の腹水といった腹圧の上昇が重なって起こると言われています。ゆるんで開いた穴が、ひとりでにふさがることはない。だから大人の臍ヘルニアは、手術でしか治せません。
幼いころからでべそを持っていて、そのまま大人になった方も多くいらっしゃいます。「でべそ」という言い方が広まっているぶん、臍ヘルニアと言われてもぴんとこない方は珍しくありません。足の付け根に出る鼠径ヘルニアも同じで、自分で押し戻して治せるものではありません。

でべそになりやすい人
| 対象 | 特徴 | 発症の要因 |
|---|---|---|
| 新生児 | 比較的一般的 | 臍輪の閉鎖不全 |
| 成人女性 | 妊娠中・産後に多い | 腹圧の上昇、腹壁のゆるみ |
| 肥満の方 | 腹部への圧力が増える | 持続的な腹圧の上昇 |
| 重労働に従事する方 | 職業的な要因 | 反復する腹圧の上昇 |
女性と産後に多いのはなぜか
上の表のとおり、成人では妊娠中と産後の女性にいちばん多く見られます。おなかが大きくなるにつれて腹壁が伸び、臍の筋膜にかかる圧が上がった状態が何か月も続くためです。へそヘルニアという言い方をされることもあります。指しているものは同じ。
産後の方で、おなかの真ん中が縦に割れているように見えることがあります。腹直筋離開といって、左右2本の腹直筋が離れてしまった状態。妊娠中や出産後に起こりやすく、診察では超音波で筋肉のあいだの距離を測ります。見た目だけでは分かりません。
出産のあと体型が戻っても、おへその膨らみだけが残る。こうした形でご相談に来られる方がいらっしゃいます。腹壁の構造の問題なので、体重が落ちても閉じるものではありません。
関連記事:女性の鼠径部の痛みは鼠径ヘルニア(脱腸)?症状が出にくい理由と見分け方を専門医が解説

専門医のワンポイント
外来でご相談を受けるなかで、「でべそが病気だとは思っていなかった」とおっしゃる方がいらっしゃいます。子どものころからずっと付き合ってきた方ほど、そう感じられるようです。見た目が気になるかどうかとは別に、押すと引っ込んで力むと出てくるなら、おなかの壁に穴が開いている状態。触って確かめるだけの受診でも構いません。
2. でべそは何科で診てもらうのか
どこへ行けばいいのか分からない。これは外来でもよく聞かれます。
ヘルニアの手術を扱うのは外科です。当院は鼠径ヘルニアの日帰り手術を中心にしていますが、臍ヘルニアについてもたびたびお問い合わせをいただき、手術も行っています。どこを受診するかという考え方そのものは、鼠径ヘルニアを何科で診てもらうかと変わりません。
ひとつだけ分けておきたいことがあります。おへその形そのものを整えたいという相談です。それは臍形成という別の手術になり、目的が見た目である以上、健康保険の対象になりません。臍ヘルニアそのものの手術であれば、健康保険で受けていただけます。
3. 手術は「縫い閉じる」か「メッシュで塞ぐ」か
臍ヘルニアの手術は、大きく2通り。メッシュという人工の補強材を使って塞ぐか、それとも使わずに縫い閉じるかです。
| 手術方法 | 適応 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 筋膜縫合 | 小さなヘルニア | 異物が残らない、感染に強い | 再発のリスクがやや高い |
| メッシュ修復 | 大きなヘルニア | 再発が少ない、痛みが軽い | 感染したときの対応が難しい |

どちらにするかは、穴の大きさで決める
メッシュを使わないときは、おへそのところで欠けている腹直筋の筋膜を糸で縫い閉じて、内臓が飛び出さないようにします。メッシュを使うときは、この欠けた部分にメッシュを当てます。筋膜の代わりになるものを置く、という発想。
選び分けの目安になるのは、手術のときに実際に見える筋膜が欠けている部分の大きさです。当院でも患者さんと相談したうえで、この大きさを見てどちらにするかを決めています。
この先おなかの手術を受ける可能性まで含めて考える
腹腔鏡でおこなう手術が広まって、多くの消化管の手術がおなかに小さな穴を開ける形で行われるようになりました。そして、その多くはおへそに創を作ります。場合によっては、切除した消化管をおへそから取り出すこともあります。
このとき、おへそにメッシュが入っているかどうかで感染のリスクが変わってきます。いざというときにメッシュの感染まで心配しなければならなくなる、ということです。
ちなみに当院で腹腔鏡の手術をするときは、おなかの壁にヘルニアができるのを防ぐ目的で5mmのポートしか使っていません。おへそに何を残すかという判断も、その延長線上にあると考えています。何を求めて来られたのかをはっきりさせて、できるだけお応えする。臍ヘルニアに限らず、鼠径ヘルニア、虫垂炎、胆のう結石を含むすべての診療に通じる考え方だと思っています。

専門医のワンポイント
外来でご相談を受けるなかで、「再発しにくいほうがいいのでメッシュでお願いします」と言われることがあります。その場で穴の大きさを測って、小さければ縫い閉じるほうをご提案する場面も少なくありません。おへそに何を残すかは、目先の再発率だけでは決めきれないところがあります。
4. 日帰り手術の流れと、当日に手術できる条件
当院の臍ヘルニアの手術は日帰りです。入院は要りません。麻酔は局所麻酔と全身麻酔から選んでいただけて、局所麻酔であれば初診の日にそのまま手術ができることもあります。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 麻酔方法 | 局所麻酔・全身麻酔 | 状態により選択 |
| 手術時間 | 約30分〜1時間 | ヘルニアの大きさで変わる |
| 入院 | 不要 | 日帰り手術に対応 |
| 当日手術 | 条件により可能 | 局所麻酔・平日月曜日に限る |
ただ、当日に手術ができるかどうかは、外来の空き具合とでべその状態しだいです。適応は医師が判断します。全員にご提供できるわけではありませんが、できる限り対応させていただきます。
手術当日の過ごし方や来院から帰宅までの流れは、日帰り手術と費用についてと初めて受診される方へにまとめてあります。
関連記事:鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術後の痛みと回復期間を専門医が解説
5. 費用は健康保険が使える。臍形成だけが対象外
でべその手術は、健康保険で受けられます。診察も、検査も、手術そのものも保険診療です。自費で受けるものだと思われている方が少なくないのですが、そうではありません。
紛らわしいのは、おへそを扱う手術に自費のものも並んでいるからだと思います。おへその形を整える臍形成がそれで、縦長のおへそが好まれる傾向にあるという報告もありますが、見た目を整えることを目的とした手術は保険の対象になりません。腹壁に開いた穴を閉じる手術と、おへその形を整える手術。扱いはまったくの別もの。

窓口でお支払いいただく金額
窓口でお支払いいただく金額は、麻酔の方法やヘルニアの大きさによって変わります。診察のうえでお伝えできますので、当院の受付までお問い合わせください。
高額療養費制度と、日帰りで有利になる点
高額療養費制度は、1か月(1日から末日まで)の自己負担額が年齢と所得に応じた上限を超えたとき、超えた分が支給される仕組みです。マイナ保険証を使うか、限度額適用認定証を出せば、窓口でのお支払いははじめから上限まで。いったん払って、あとから返してもらう手間がかかりません。
日帰りで手術を受けると、この制度の面でも助かる部分が出てきます。入院時の食事代と差額ベッド代は高額療養費の対象外で全額自己負担ですが、日帰りならそもそも発生しません。入院が月をまたぐと上限額が2か月ぶん適用されることもありますが、1日で終われば、その心配もない。
制度そのものの中身は鼠径ヘルニアの手術費用と高額療養費制度で詳しく説明しています。上限額は2026年8月に引き上げられたので、2026年8月からの高額療養費の上限額もあわせてご覧ください。
6. 放置するとどうなるか
でべそは、そのままにしておくと袋が少しずつ大きくなることがあります。
気をつけたいのが嵌頓です。飛び出した内臓が穴にはまり込んで、戻らなくなった状態。嵌頓が起きたときの症状は鼠径ヘルニアの場合と共通しますが、臍ヘルニアで早めの手術がすすめられるのも、これが起こりうるからにほかなりません。
押しても戻らない膨らみと強い痛みがあるときは、その日のうちに受診してください。

よくある質問
治りません。赤ちゃんのでべそは成長とともに閉じることが多いのですが、大人になってから発症した臍ヘルニアは別です。ゆるんで開いた筋膜の穴がひとりでにふさがることはないため、根治するには手術になります。
ヘルニアの手術を扱うのは外科です。当院は鼠径ヘルニアの日帰り手術を中心にしていますが、臍ヘルニアについてもお問い合わせをいただき、手術を行っています。おへその形だけを整えたい場合は臍形成という別の手術になり、診療科も変わります。
使えます。臍ヘルニアの診察・検査・手術は健康保険の対象です。1か月の自己負担額が上限を超えた場合は高額療養費制度も利用できます。ただし、見た目を整えることを目的とした臍形成は保険の対象外で、全額自己負担になります。
局所麻酔で行える場合に限り、平日月曜日であれば初診当日の手術が可能なことがあります。当日の外来の空き状況とでべその状態に応じて医師が適応を判断しますので、必ずご提供できるとは限りません。ご希望があれば、来院前にお電話かLINEでご相談ください。
腹直筋離開かもしれません。左右2本の腹直筋が離れてしまった状態で、妊娠中や出産後に起こりやすく、超音波で筋肉のあいだの距離を測って調べます。おへその膨らみが気になるようでしたら、あわせて診察させていただきます。
まとめ
- 大人になってから出てきたでべそ(臍ヘルニア)は、放っておいてもふさがらない
- ヘルニアの手術を扱うのは外科。当院では臍ヘルニアの日帰り手術も行っている
- 手術は縫い閉じるかメッシュで塞ぐか。筋膜の穴の大きさを見て決める
- この先おなかの手術を受ける可能性も、メッシュを使うかどうかの判断に入る
- 局所麻酔なら、平日月曜日に限り初診当日の手術ができることもある
- 健康保険が使える。ただし見た目を整える臍形成は対象外
- 押しても戻らない膨らみと強い痛みは嵌頓を疑い、その日のうちに受診する
おへその膨らみは、痛みがないまま何年も続くことがあります。だからこそ受診のきっかけがつかみにくい。触って確かめるだけの受診でも構いませんので、気になったときにご相談ください。当院で行った手術の件数は、集計した期間とあわせて当院の手術実績で公開しています。足の付け根に出るほうについては、鼠径ヘルニア(脱腸)の症状から治療までをご覧ください。