閉鎖孔ヘルニアとは?太ももの内側の痛みと、高齢女性の脱腸の見分け方を専門医が解説
太ももの内側が痛む、しびれる。足の付け根を鏡で見ても、膨らみは見当たらない。痩せた高齢の女性にこうした症状が続くときに考えておきたいのが、鼠径ヘルニア(脱腸)の仲間にあたる閉鎖孔ヘルニア(へいさこうヘルニア)です。
骨盤の奥にある穴から腸が出てくるので、外から膨らみがほとんど見えません。脱腸だと気づかれにくい型です。
その痛みに、吐き気や、便・ガスが出ない症状が重なったら、様子を見ずにその日のうちに受診してください。
この記事で分かること
- 閉鎖孔ヘルニアとは(閉鎖孔の場所と、通っているもの)
- 太ももの内側の痛み・しびれという症状
- 鼠径ヘルニア・大腿ヘルニアとの違い
- 腸が詰まる前に受診してほしいサイン
- 診断の方法と、受診する科
目次
1. 閉鎖孔ヘルニアとは
1-1. 閉鎖孔は、骨盤の骨に囲まれた穴
閉鎖孔は、骨盤の前のほうで、恥骨と坐骨という2つの骨に囲まれた穴です。神経や血管の通り道になっていて、閉鎖神経という神経もここを通ります。
この穴から、お腹の内側を覆っている腹膜と腸が押し出されて抜け出したもの。それが閉鎖孔ヘルニアです。

1-2. 脱腸のなかで、いちばんまれな型
脱腸は出てくる場所によって外鼠径ヘルニア・内鼠径ヘルニア・大腿ヘルニア・閉鎖孔ヘルニアに分かれ、4つのうち最もまれで、しかも診断がいちばん難しいのが閉鎖孔ヘルニアです。日本ヘルニア学会の分類では、外鼠径・内鼠径・大腿のどれにも入らない「特殊型」に数えられています。
鼠径ヘルニアと同じ方に、あわせて見つかることもあります。
2. 症状は、太ももの内側の痛みやしびれ
骨盤の深いところにある穴なので、腸が出てきても、足の付け根の表面にはほとんど膨らみが出ません。代わりに出てくるのが、太ももの内側の痛みやしびれ。出てきた腸が、すぐそばを通る閉鎖神経を押すためです。
右か左、片側の太ももの内側が痛む、という訴えから始まることがあります。お腹の症状が軽いこともあって、脱腸だと気づかれないまま、時間だけが過ぎていく。


専門医のワンポイント
外来でご相談を受けるなかで、太ももの内側の痛みで、しばらく整形外科に通っていたという方に出会うことがあります。腰や関節から来る痛みと考えるのは自然なことですし、閉鎖孔ヘルニアは膨らみが見えないぶん、どこの科でも気づかれにくい病気です。膨らみが無いことは、脱腸ではない理由にはなりません。
膨らみの無い鼠径部の痛みには、筋肉や腱、股関節の病気もあります。内転筋腱炎や恥骨炎、股関節症がその例で(CQ3-1)、脚を動かしたときに痛み、休むと軽くなるのが、こちらの特徴。
3. 高齢の女性の脱腸は、出る場所で見分ける
女性の鼠径ヘルニアは膨らみが分かりにくいと言われます。理由のひとつが、膨らみの小さい大腿ヘルニアや、外からほぼ見えない閉鎖孔ヘルニアが混じってくることです。高齢の女性で足の付け根や太ももの症状があるときは、この3つを区別して考えます。
大腿ヘルニアは、鼠径靭帯の下にある小さな穴から出る型で、膨らみは鼠径ヘルニアより低い位置、太ももの付け根寄りに出ます。高齢で痩せ型、出産回数の多い女性に多いとされてきましたが、これを支える明確な根拠は見つかっていません(CQ2-1)。穴が小さく硬いぶん、腸がはまり込むと戻りにくく、症状が無くても手術が勧められる型です(CQ6-1)。

それよりさらに奥、骨盤の骨の穴から出てくるのが閉鎖孔ヘルニアです。膨らみで気づくことはほとんどなく、手がかりは太ももの内側の痛みやしびれになります。
4. 腸が詰まる前に受診してほしいサイン
怖いのは、出てきた腸が穴にはまり込んで戻らなくなる嵌頓(かんとん)です。骨盤の奥の穴から出る型は嵌頓しやすく、しかも外から見えにくい。腸が詰まりかけてから、ようやく見つかる。そういう経過も、実際の診療で経験しています。

太ももの内側の痛みに、吐き気や嘔吐、便やガスが出ない、お腹が張るといった症状が加わったら、その日のうちに受診してください。放っておくと腸が詰まってしまう危険があるので、夜間や休日でも救急外来へ。
5. 診断はCTで。受診は外科へ
見た目や触った感じでは分かりにくいのが、この病気の難しいところです。確かめる方法としていちばん確実なのは、CT検査。
膨らみが主なら、脱腸で受診する科は外科・消化器外科が目安です。閉鎖孔ヘルニアのように太ももの痛みが前に出る型でも、疑うときの相談先は変わらず外科になります。
足の付け根の膨らみや痛みのご相談は、当院でも受け付けています。
診療時間 月・水〜土は21時まで、火曜と日・祝は17時まで診療しています(17時以降と火曜・日祝は要予約)。電話・Web予約・LINEでのご予約・ご相談は、24時間365日受け付けています。
よくある質問
骨盤の骨(恥骨と坐骨)に囲まれた閉鎖孔という穴から、腹膜と腸が押し出されてくる脱腸の一種です。脱腸のなかでは最もまれな型で、痩せた高齢の女性に多くみられます。
出てくる場所が違います。鼠径ヘルニアは足の付け根に膨らみが出て、横になると引っ込むのが典型です。閉鎖孔ヘルニアは骨盤の奥の穴から出るため膨らみがほとんど見えず、太ももの内側の痛みやしびれで気づきます。嵌頓しやすい型でもあります。
片側の太ももの内側の痛みやしびれが手がかりです。そこに吐き気や嘔吐、便やガスが出ない症状が加わったら、腸が詰まりかけているおそれがあります。その日のうちに受診してください。夜間や休日は救急外来へ。
外科です。太ももの痛みから整形外科にかかる方もいますが、閉鎖孔ヘルニアを疑うときの相談先は外科になります。確かめるには、CT検査がいちばん確実です。
まとめ
閉鎖孔ヘルニアは、膨らみではなく、太ももの内側の痛みやしびれで出てくる脱腸です。
おさらい
- 閉鎖孔は、恥骨と坐骨に囲まれた骨盤の穴。閉鎖神経が通っている
- 膨らみはほとんど見えず、片側の太ももの内側が痛む・しびれる
- 痩せた高齢の女性に多く、嵌頓しやすい
- 吐き気、便やガスが出ない症状が重なったら、その日のうちに受診
脱腸には、出てくる場所の違う型がほかにもあります。脱腸の種類と見分け方を知っておくと、ご家族の症状を伝えるときにも役立ちます。