鼠径ヘルニア(脱腸)かも?何科に行くべきか専門医が解説

鼠径ヘルニア(脱腸)といえば鼠径部(足の付け根)にしこりを触れる病気です。足の付け根がふくらむ、脱腸かも?そんなとき「何科に行けばいいのか分からない」と悩む方は多いです。
本記事では、鼠径ヘルニアが疑わしいときに受診すべき診療科について、専門医の視点から詳しくご紹介します。外科・泌尿器科の違いや検査内容、早期治療の重要性まで丁寧に解説いたします。
この記事で分かること
- 鼠径ヘルニア(脱腸)とは何か?基本的な仕組み
- 足の付け根・鼠径部に膨らみや違和感があるときの見分け方
- 鼠径ヘルニアの診断に適した診療科(何科を受診すべきか)
- 男性と女性で受診科に違いはあるか
- 検査方法と診断プロセス
- 早期受診の重要性と放置のリスク
目次
鼠径ヘルニア(脱腸)とは?症状と原因
鼠径ヘルニア(脱腸)について正しく理解するために、まず基本的な仕組みから解説していきます。
鼠径ヘルニアの基本的なメカニズム
体は筋肉という壁に覆われていますが、一枚板の筋肉ではなく、何枚かの筋肉が立体的に壁を構築しています。
鼠径部では筋肉に隙間が空いている箇所があります。
その隙間から腹膜が袋状に皮膚の下まで脱出するのが鼠径ヘルニアであり、袋の中に腸管が出ると患者様は「鼠径部が膨れた」と感じるわけです。

典型的な症状:立つと膨らみ、横になると消失
典型的な症状は、以下のような特徴があります:
- 立ったり、お腹に力を入れたりすると鼠径部に膨らみが出る
- 横になると膨らみが消失する
- 手で押すと一時的に戻る
鼠径ヘルニアは自然に治ったり、自力で治すことはできません。治療には手術が必要です。
嵌頓の危険性と緊急性
鼠径ヘルニアは放置すると以下のような危険があります:
- 徐々に大きくなる
- 「嵌頓」という危険な状態になる
- 腸閉塞と腸管虚血を起こす
- 腸が壊死して腹膜炎に至る
嵌頓とは、文字通り、嵌り込んで、頓挫した、を指します。

(右側)小腸がヘルニア門から体壁外へ脱出している状態
鼠径ヘルニアは何科を受診すべき?消化器外科vs泌尿器科
鼠径ヘルニアは何科を受診すべきか迷われる方は多く、適切な診断には正しい診療科選択が重要です。
消化器外科が第一選択となる理由
鼠径ヘルニアは消化器外科医が診断と治療を担当します。その理由は以下の通りです:
- 脱出する臓器が殆どの場合が腸管である
- 嵌頓した場合は腸管を切除することもある
- 鼠径ヘルニアの診療には消化器外科医が最も多く携わっている
鼠径ヘルニアの手術は、外科領域で最もメジャーな手術の一つであり、全国で月間11,000件の手術が行われています。
泌尿器科を受診する患者が多い理由
しかし、実際には泌尿器科を受診される患者様も少なくありません。
理由は、症状が出現する場所が陰部の近くだからと考えられます。
男性と女性で受診科に違いはある?
日本では消化器外科医が鼠径ヘルニアの診療を得意としており、男性・女性問わず消化器外科での受診が適切です。
男性・女性別の症状の違いと適切な診療科
男性の鼠径ヘルニア:陰嚢への進展と泌尿器科受診の理由
男性の鼠径ヘルニアでは、以下の解剖学的特徴があります:
- 筋肉の穴を通って皮下まで脱出する際に鼠径管というトンネルを通る
- 鼠径管は本来、睾丸が胎児期に体外に脱出する時に通る道
- 成人男性では精巣挙筋、精巣動静脈、輸精管が通っている
女性の鼠径ヘルニア:症状の特徴と診療科選択
成人女性では、子宮円索が通ります。
鼠径ヘルニアでは内臓がこの鼠径管を通って皮下まで脱出します。
鼠径ヘルニアで陰部の近くが膨らむ理由
なので、発症してすぐの段階では恥骨の外側が膨らみ、症状が進行すると陰嚢が膨らみます。
このため、症状の出現部位から泌尿器科を受診される患者様が多いのです。
鼠径ヘルニアの検査方法と診断プロセス
鼠径ヘルニアの診断は、適切な検査方法と正しい診療科選択が重要です。足の付け根や鼠径部の膨らみや違和感を感じた時の検査方法と受診科について、専門医の視点から解説します。
問診と視診による初期診断
鼠径ヘルニアの診断は基本的には患部の視診と触診で行います。診察時の重要なポイントは以下の通りです:
- 腹圧が高い時の方が鼠径ヘルニアの有無を確認しやすい
- 立った状態でお腹に力を入れていただく場合がある
- 「どのような時」に出っ張るのかを詳細に問診
- 「どうしたら」戻っていくのかについて確認
必要に応じた画像検査
視診や触診のみでは鼠径ヘルニアの類似疾患との鑑別が困難な時もありますので、当院では腹部超音波検査も併用しております。
他の疾患との鑑別診断
鼠径部(足の付け根)のしこりは様々な病気が考えられ、当院では鼠径ヘルニア以外の疾患についても責任をもって鑑別診断や治療を行います。
鼠径ヘルニア治療の病院選びと受診時の注意点
外科・消化器外科が最適な診療科
結論として外科もしくは消化器外科が、最も適切な診療科です。
泌尿器科は、陰嚢の腫れが主症状の場合や排尿障害を伴う場合に適していますが、基本的には、外科での受診をお勧めします。
専門クリニックと総合病院の違い
鼠径ヘルニアの治療は、専門クリニックでの日帰り手術が一般的になってきています。
専門クリニックでは、鼠径ヘルニア治療に特化した設備と経験豊富な医師による治療が受けられます。
受診前に準備すべきこと
受診時は、症状の詳細を整理しておくことが重要です。以下の点を確認しておきましょう:
- いつから症状があるか
- どのような時に膨らむか
- 痛みの有無や程度
- 膨らみが戻るかどうか
初診では疾患の診断をし、日帰り手術を受けられるか検査を行います。患者様のご都合に合わせた日程で手術を組みます。
正確な診断を受けるための注意点
特に女性では類似疾患との鑑別が重要です。20代~40代の女性に好発し、鼠径ヘルニアと鑑別が必要な疾患としてNuck管水腫があります。鼠径ヘルニアと鑑別が必要なので、超音波やCTなどの画像診断が必要になります。

患者さまが知っておくべきポイント
- 受診は外科が最適
- 立位での診察が診断に重要
- 女性では類似疾患との鑑別が必要
- 初診で診断と治療方針が決まることが多い
MIDSクリニックの鼠径ヘルニア専門治療
鼠径ヘルニア専門の日帰り手術実績
当院は鼠径ヘルニアの日帰り手術を専門とするクリニックです。
放置すると危険な鼠径ヘルニア、早めの治療で術後の合併症の発生率も下がります。
腹腔鏡による低侵襲治療
当院では腹腔鏡を用いた低侵襲手術(TAPP法)を採用しており、傷口が小さく、術後の回復も早いことが特徴です。
アクセス・診療時間・相談方法
当院では患者様の利便性を考慮した診療体制を整えています:
- 平日は21時まで診療
- 土日祝日も診療
- 電話で24時間相談受付
- LINEで24時間相談受付
いつでもお気軽にご相談ください。
まとめ
鼠径ヘルニアは陰部の近くに症状が出現することが多いので泌尿器科を受診される患者様も多いです。
日本では消化器外科医が鼠径ヘルニアの診療を得意としています。
放置すると危険な鼠径ヘルニア、早めの治療で術後の合併症の発生率も下がります。
足の付け根の膨らみや違和感を感じたら、まずは消化器外科での受診をお勧めします。当院では専門医による適切な診断と治療を提供しております。